NMNはまれな伝達性神経変性疾患の治療に有効という結果が

NMNはまれな伝達性神経変性疾患の治療に有効という結果が

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)によるNAD+レベルの向上は、プリオン疾患による損傷したミトコンドリアのクリアランス欠陥を改善し、細胞死からこれらのニューロンを保護する作用があります。

ハイライト:

  • マイトファジー:損傷したミトコンドリアの除去 :プリオンと呼ばれるまれな神経変性疾患のマウス細胞モデルにおいて、ミトコンドリアのマイトファジー(損傷したミトコンドリアを除去する)機能が損なまれていることが見られました。
  • プリオン病に罹患したニューロン細胞にNMNまたはウリリシンA(UA)を補充すると、ミトコンドリアのマイトファジー機能が著しく回復しました。
  • しかしながら、UAではなくNMNのみが、プリオンにより誘発されたミトコンドリア損傷や機能障害、ニューロン細胞死を軽減することができました。

プリオン病は、2003年に英国で発生した「狂牛病」事件で一般の人にも注目を集めたました。 これはヒトにも動物にも感染する慢性的で致命的な神経変性疾患です。他の多くの神経変性疾患と同様に(脳をスポンジ化し伝染する疾患:特にアルツハイマー病やパーキンソン病のような年齢に関連する疾患)プリオン病は誤って折り畳まれたタンパク質に関連しており、特に、アルツハイマー病やパーキンソン病では、ニューロンの中の損傷したミトコンドリアが持続的に蓄積されたことにしばしば影響されています。

中国の北京市にある中国農業大学の研究者によると、二つのNAD+ブースト化合物がプリオン病のニューロンを死から守ると報告しました。

「細胞の病と死」を出版したLi教授とその仲間は、NMNとウリリシンAは、マイトファジー(損傷したミトコンドリアを除去する過程)によって誘発されたプリオン病のニューロンの中に、健康なミトコンドリアを増やす改善が見られたと報告しました。これらの発見は、マイトファジーにNAD+が活性化する化合物を用いて刺激を与えると、プリオン病を防ぐ治療になりうることを示唆しています。

 

ミトコンドリアの損傷はプリオン病を永化させる

「プリオン」とは、伝染性のある異常な、病の発症因子です。脳のいたるところにはプリオンタンパク質があり、その中の正常な細胞タンパク質が不適切に折り畳まれることによって引き起こされる物です。クロイツフェルト・ヤコブ病のようなプリオン病は、自発的に発生したり、遺伝したり、感染した組織に接触したり、臓器移植によって、または汚染された肉類を食べることによっても発症します。

これらの正常なプリオンタンパク質の役割が現在研究されている中で、プリオンタンパク質が異常に折り畳まれることで、脳の損傷や疾患の典型的な徴候や症状を引き起こすことが知られてきています。プリオン病は、性格の変化、不安、うつ病、および記憶喪失を招くことが明らかにされており、通常数ヶ月以内に多くの人が昏睡状態となってゆきます。プリオン病は急速に進み、常に致命的であるが、このような急速な神経変性疾患がどのように引き起こされるのかは謎のままです。

ニューロンの中の損傷したミトコンドリアの持続的な蓄積は、老化およびプリオン病を含む神経変性疾患と関連づけられてきました。ミトコンドリアのマイトファジーは細胞内のミトコンドリアの質をコントロールする経路の一つであり、損傷したミトコンドリアを選択的に除去することができます。これはプリオン病における損傷したミトコンドリアの蓄積と関係があるようです。

ニューロンの中のPINK 1−parkin依存性マイトファジー経路の重要性は多くの研究で報告されています:PINK 1−parkinは、損傷したミトコンドリアを除去するために標識をつける信号伝達経路を形成しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24446486/ ミトコンドリアの品質管理におけるParkinとPINK 1の役割。ミトコンドリアストレスへの反応として、ParkinはPINK 1に依存するミトコンドリア嚢胞の形成を誘導し、これらの嚢胞はリソソームと呼ばれる細胞構造を標的とし、これらの細胞構造は貨物を包んで分解する。この過程をミトコンドリア・オートファジーと呼ぶ。

 

NAD+ブースタープリオン病ニューロン細胞のミトコンドリアのオートファージを改善する

ミトコンドリア損傷はニューロン損傷の初期の指標であるので、オートファジー欠損とミトコンドリア損傷との関連性の解明がプリオン病の早期の予防と治療に非常に重要となります。本研究では、Li教授と仲間達は、プリオン病の細胞モデルでの損傷したミトコンドリアの蓄積について研究しました。

このモデルについて、北京の研究チームは、プリオンタンパク質106-126(Pr P 106-126)と呼ぶ、プリオンに影響を与える有毒タンパク質の断片を使って、マウスのニューロン細胞に感染させました。

この方法は広範な細胞死を引き起こし、生存率が50〜60%まで落ち込みました。さらに、ミトコンドリアは明らかに破断してひどく損傷し、PINK 1−Parkinに媒介されたミトコンドリアのオートファジーは消滅し、ほぼ活性化しなかった。しかし、NMNで治療した時、プリオンモデルのニューロン細胞は死を免れました。対照的に、UAはPr P 106−126に誘導された細胞死を著しく緩和することができませんでした。

Li氏の研究グループは、プリオンモデルのニューロン細胞を遺伝子操作して、Pink 1とParkinを過剰に産生させることによって、ミトコンドリアのオートファジー欠陥は緩和されました。 同様に、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)またはウロリシンA(UA)の2つのミトコンドリアオートファジー誘導剤の補充は、PINK 1−Parkinによるミトコンドリアオートファジーを著しく刺激しました。しかしながら、NMNと比らべ、UAはプリオンによるミトコンドリア断裂と機能障害を軽減できませんでした。

https://www.nature.com/articles/s41419-022-04613-2#Sec10 ウリリンAではなくNMNを用いてミトコンドリアオートファージを活性化させると、プリオン病モデルのニューロンにおける細胞死を軽減できる。李氏と同僚はプリオン病原因物質(PrP 106 – 126)によって感染しているか、またはなしで扱われるニューロン細胞のミトコンドリア断片化と細胞生存性にNMNとウロリシンA(UA)の影響をテストした。

 

なぜウロリシンではなくNMNプリオン病のニューロンを死から守るのか?

Li教授とその仲間たちは、プリオン病の影響を受けた細胞が深刻なミトコンドリア断裂と機能障害に陥ることを示しました。マイトファジー活性化因子NMNは、プリオン病細胞モデルにおいてPINK 1−Parkinによるミトコンドリアのオートファジーを活性化し、ミトコンドリアの形態および機能を回復し、Pr P 106−126によるニューロン細胞死を軽減します。NMNの他の治療効果は早期老化に関連する共済失調性血管拡張症および高血圧からの脳卒中などの他の疾患においても報告されています。

一方、UAはミトコンドリアのオートファジー機能を活性化するものの、損傷を受けたミトコンドリアの断片でプリオン病の影響を受けた細胞を、軽減させることはできません。これによりUAが機能するためのいくつかの機能的ミトコンドリアだけをもつ細胞しか残らない結果となります。 その理由で、北京の研究者はUAを補充することでプリオン病によるニューロン死を緩和することはできないと考えています。UAはPr P 106−126によるミトコンドリア断裂と機能障害を緩和することができず、最終的に細胞死と活力低下をもたらすという興味深い現象です。

ミトコンドリアマイトファジーを活性化するNMNとUAのメカニズムの違いはさらなる研究が必要であり、これはクロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病を治療する正確な標的を見つけるのに役立つかも知れません。

このようなミトコンドリアオートファジー経路の欠陥は、アルツハイマー病およびパーキンソン病および心筋症のような他の疾患において報告されているため、ミトコンドリアオートファジー活性化剤は潜在的に広範分野での治療に役立つ可能性があります。異なるミトコンドリアオートファジー活性化剤は、特定の疾患に対してより効果的である可能性があるため、細胞の健康と活性化を促進するミトコンドリアのオートファジー活性化剤をいろいろな疾患ごとに選別し、研究していく必要があります。

 

ソース

Li J, Lai M, Zhang X, Li Z, Yang D, Zhao M, Wang D, Sun Z, Ehsan S, Li W, Gao H, Zhao D, Yang L. PINK1-parkin-mediated neuronal mitophagy deficiency in prion disease. Cell Death Dis. 2022 Feb 18;13(2):162. doi: 10.1038/s41419-022-04613-2. PMID: 35184140.

 

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