SARS‐CoV‐2による肺炎のマウスモデルにおけるNAD+とNMNの治療について

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2019年にCOVID-19が世界中で急速に広がり、500万人以上の人々の死者を出す事態を引き起こしました。重篤なCOVID-19を患っている患者は呼吸困難を発症し、多くの人がそれにより命を失いました。高い予防効果のあるワクチンが開発されたにもかかわらず、SARS-CoV-2は急速に変異するCOVID-19の流行の予測に不確実性をもたらしました。世界各地の多くの研究チームは、新型コロナウイルスの予防と治療に力を入れています。研究が進むにつれて、NMNを代表としたNAD+前駆体が、その中の重要な突破口となっています。

2022年4月29日、中国科学院は北京大学と清華大学を連合して、『Cell Discovery』に研究を発表しました。研究によれば、NMNを補充することで、新型コロナウイルス感染後にNAD+の代謝、免疫反応、細胞死関連遺伝子の発現を改善し、細胞の死亡を抑制できたと発表しています。

 

NAD+サプリメントはSARS‐CoV‐2による肺炎を緩和する

研究チームはまずSARS-CoV-2 MASCp 6に感染したマウスを用い、NAD+(1 mg/g/g/日)を老化したマウス(8-9カ月)と若いマウス(6-7週間)に投与し治療しました。もう一つのグループには塩水を投与しました。

c:炎症性細胞凝集体の密度d:炎症性細胞凝集体の面積e:閉塞した気道の比率f:閉塞した気道の面積

老化したマウスでは、MASCp 6マウスモデルと同様に、重症の炎症細胞浸潤、肺胞中隔肥厚、溶血、上皮損傷、気道閉塞、細胞死を含む病理学的特徴が検出されました。一方、NAD+で治療したマウスの肺炎性細胞浸潤と気道閉塞の症状は著しく軽減し、NAD+治療後溶血は検出されなかったことは注目すべきことです。若いマウスでは、NAD+治療によりそれらの病状はほぼ除去されましたが、qPCRや免疫染色などの手段を通して、まだたくさんのウイルスが存在していることも検出されました。この療法により病理学的損傷は軽減されましたが、同時にウイルスの複製を軽減できていないことも示しています。

 

NMNを補い、新型コロナウイルスによる肺炎を緩和できる

研究者はNAD+の前駆体NMNが新型コロナウイルスによる肺炎に対して似たような治療効果を示すかどうかを研究するため、より毒性が強いSARS-CoV-2 MASCp 36を用いて、加齢したマウス(8-9カ月)に感染させ、NMNとNAD+を投与する治療をしました。NMNの用量は500 mg/kg/日であり、NAD+の用量も同じ量とし、もう一つのグループには塩水を投与しました。

その結果、塩水を投与したグループに検出された重篤な炎症性細胞の浸潤および肺胞間隔の増厚と比較して、NMNおよびNAD+群の病理的損傷は著しく軽減されていることが判明しました。意外なことに、NMN組では30%のマウスが生存し、対照となる組のマウスは8日目にすべて死亡しました。さらに、NMNおよびNAD+組は、それぞれ72.0%および73.9%の死亡細胞を明らかに抑制しました。遺伝子発現ではCd 200 r 4とApaf 1発現はNMN群で有意に抑制されましたが、NAD+群ではその事象は観察されませんでした。その結果、NMNを補給すると、NAD+の同じような治療効果を達成するだけでなく、感染したマウスの死亡率が下がることも示唆されました。

a:MASCp 36感染した老年マウスにNMNとNAD+を添加した実験の設計図。

b:塩水、NMNおよびNAD+を投与したMASCp 36に感染した老年マウスの肺切片のH&Eの染色結果。

c:塩水(n=10)とNMN(n=10)に用いてMASCp 36に感染した老年マウスの生存率。

d:各群の2つの隣接肺切片のSARS-CoV-2核衣殻(緑)およびマクロファージのマーカー(CD 68,赤)の抗体の免疫染色結果。

e:CD 68+密度の定量化は塩水、NMNとNAD+の肺切片細胞から発生。

f,g: qPCRの結果は、CD 400受容体遺伝子であるCd 200 r 3(f)およびCd 200 r 4(g)の相対発現レベル。

h:各群の2つの隣接肺切片のSARS-CoV-2核衣殻(緑)およびCas 3(赤)抗体の免疫染色結果。

i:MASCp 36に投与された老年マウスの塩水、NMNおよびNAD+のCas 3+細胞と感染細胞の比率を定量化。

j:アポトーシスプロテアーゼ活性化因子遺伝子Apaf 1の相対発現レベルのqPCR結果。

 

NMNの補給で、新型コロナウイルスによる代謝障害を部分的に改善できる

研究者は次に、標的代謝組織学を分析し、NMNの保護作用をより詳しく調査しました。MASCp 36感染群(MASCp 36+塩水)と対照となるグループ(同じ性別と年齢の感染していなかったマウス)との間の代謝群を比較しました。感染したグループでは75種の顕著な失調代謝物が検出され、そのうち22種が上昇し、53種が低下しました。その後、研究者はMASCp 36感染マウスの塩水を投与されたグループとNMNを投与したグループとの間の代謝群を比較しました。NMNのグループでは、グルタミン、アスパラギン、プロリン、コリンおよびグリシンを含む、下方調節された53種類の代謝物のうち23種類が改善されたことが分かりました。研究の結果、NMNを補充した後、MASCp 36感染マウスの肺中NAD+、NMN、NRおよびNAMはいずれも上昇しました。さらに、NMNの補給は、クエン酸サイクル(TCAサイクル)におけるアセトン酸、エピタキシエ酸およびリンゴ酸、トリプトファンおよびイヌ尿酸経路およびグルコースを含み、新型コロナウイルスによって低下した代謝物のレベルを回復することが分かりました。標的代謝組織学的解析により、新型コロナウイルスを患った患者の血清中の代謝障害は、マウスモデルの肺部分で再現され、NMNの補充によって改善できることが明らかになりました。

a:KEGGはMASCp 36感染したマウスと対照組のマウスとの間の顕著な代謝物を分析。

b:この図は、MASCp 36に感染したにセリンとプロリン代謝経路の不調を示しています。

c:上位25個の最も上昇した代謝物と上位20個の最も低下した代謝物を示しています。

d:MASCp 36感染マウスの塩水を投与したグループと比較して示しました。

e:概略図は、MASCp 36感染マウスにおけるTCAサイクルに属する代謝物の不調が部分的なNMN補充によって回復することを示しています。カラーのないブロックノードは、未試験代謝物を表わしています。

この研究で、NMNを利用して、新型コロナウイルスによる様々な症状を改善できることを改めて証明しました。

 

参考文献

[1] Jiang, Y., Deng, Y., Pang, H., Ma, T.,Ye, Q., Chen, Q., … & Xu, Z. (2022). Treatment of SARS-CoV-2-inducedpneumonia with NAD+ and NMN in two mouse models. CellDiscovery, 8(1), 1-17.

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