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NMNを使ったマウス実験で大腸炎の改善に効果が出る

マウスの大腸炎モデルにおいてNMN投与で炎症を防ぐことができました。

ハイライト:

  • 特定の免疫細胞(マクロファージ)に「NAD+総合体」の不足が起こると  マウスは大腸炎を引き起こします。
  • 死んだ細胞を取り込み、細胞組織の修復をするマクロファージのクリーンアップ作用は「NAD+総合体」と深く関係があります。
  • NMNを投与することによって、マウスの大腸炎は改善し生存率が向上します。

炎症作用はそもそも体内へ外部から異物が侵入する際に対処する必要不可欠な免疫反応によって起こります。最初に、炎症は有害細菌やウイルス(病原体)を破壊する免疫細胞を呼び寄せてそれらの働きを活発化させます。過剰な炎症が持続的に起こると、喘息や炎症性腸疾患(IBD)などの疾患につながるので、炎症は最終的には沈静化しなければなりません。

韓国アジア医科大学の研究者達は、細胞のエネルギーにとって大事な「NAD+」のレベルが、マウスの大腸炎の症状の進行に関連していることを発見し、炎症と大腸炎の間にあるメカニズムを明らかにすることに貢献しました。「Redox Biology」に発表された研究によると、マウスのマクロファージという免疫細胞に、NMNと呼ばれる「NAD+」の前駆体を作り出す酵素であるNAMPTが欠乏していると、炎症反応で大腸炎が悪化し、生存率が低下しました。

この影響を確認する意味で、1週間に3回のNMN(500 mg/kg)をマウスに投与したところ、疾患の程度および生存率を含めて、大きく改善されることが明らかになりました。この発見は、NAMPTが依存する「NAD+」の生合成経路を活性化させることがIBDのような炎症性疾患を治療できる可能性を示しています。

 

炎症のバランスを探す

私たちの腸内は、微生物と細胞群が広がり、まるで新陳代謝を繰り返す大都市の光景に似ています。マクロファージはその中のひとつの細胞であり、腸粘膜免疫システムの最適化に欠かせない重要な役割を果たしています。これらの腸内マクロファージは、病原体、細菌壁成分、および死亡細胞を除去するために機能しています。

 

しかし、IBDでしばしば観察されるように、炎症の治療段階で病原体に対し強力な保護対応を怠ると、それがかえって継続的なひどい炎症を引き起こすこともあります

さらに、たくさんの証拠が示すとおり、マクロファージで炎症を抑える作用を強化することは腸内の炎症をコントロールし、腸の内膜を修復する新しい治療法としての確立されつつあります。

 

「NAD+総合体」は腸内の炎症反応を制御します。

ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)は細胞エネルギーの維持に必要な「NAD+」の循環生合成経路において重要な役割を担っています。NAMPTは「NAD+」の前駆体であるNMNを触媒とし、リューマチ性関節炎、糖尿病、敗血症を含む様々な炎症性腸疾患を改善するために不可欠な要素であり、それらの作用に深く関連しています。しかし、炎症性を起こしたマクロファージの中のNAMPTの役割は、完全に解明されておらず、特にIBDの場合にはわからないことがあります。

 

IBDにおけるNAMPTの役割を研究するために、韓国人アジア医科大学のHong教授とその仲間達は、マウス実験で機能性NAMPT遺伝子が欠乏したマクロファージも持つマウスが大腸炎を発症する実験に成功しました。この遺伝子の変化により、マウスはNAPT活動不足による炎症反応が初期段階から続き、結果的に長期にわたる重篤な炎症を引き起こしました。これらのNAMPTの遺伝子欠陥を有するマクロファージをもつマウスは、大幅な体重減少と生存率の低下を示しました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35063804/ マクロファージにおけるNAMPTの欠損はDSS誘導結腸炎を増強する。(左)2.5%硫酸グルカンナトリウム(DSS)で誘導された大腸炎マウスの生存曲線。(E)疾病活動指数(右)疾病活動指数(DAI)は、大便頻度、血便および体重減少に基づいて採点される。各パラメータは0から4(合計0-12)に縮小される。

 

NAMPT欠損はマクロファージの発生やサイトカインの分泌には影響がありませんでした。NAMPT欠損は、炎症の回復と腸内壁のバランスの回復に重要なマクロファージの「クリーンアップ」プロセス(食作用)を損なうことになったのです。食作用の低下は、不十分な「NAD +」レベルから生じた組織破片や死んだ細胞を除去する事ができなくなるという結果をもたらしました。総じて、これらの結果から、マクロファージに特異的なNAMPT欠陥がもたらされると、長期的且つ深刻な腸炎につながることがマウスモデルにおいて示唆されたことになります。

 

NMNは大腸炎マウスの生存率を高める

Hongと同僚は、これらのマウスにおいて週3回、500 mg/kgのNMNまたは生理食塩水の注射を実施しました。このNMN治療は体重減少と大腸炎の重症度を緩和し、生存率を向上させました。そのうち、生理食塩水の注射を実施したマウスの生存率は33%(4/12マウス)であり、NMNの注射をしたマウスの生存率は67%(8/12マウス)という結果がでました。NMN治療は、細胞死マーカーを減少させ、マクロファージ浸透を減少させながら複製状態にある細胞の数を増加させました。これらの結果から、NMN投与による炎症の抑止効果は、マウスを大腸炎から守ることができるということを示しました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35063804 NMNはNAMPT欠乏マウスの結腸炎の重症度を軽減した。(左)疾病活動指数(DAI)は、大便頻度、血便および体重減少に基づいて採点した。各パラメータは0から4(合計0-12)に縮小されます。(対)

 

次に、Hongと彼の同僚はNMN注射がマウスに有害な副作用を及ぼす可能性があるかどうかについて実験しました。NMN治療後、大腸、肝臓或いは脾臓に、大きな異常も微細な異常も見られませんでした。また、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギンアミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルの上昇なども見られず、NMN注射は肝機能に害を及ぼすことなく大腸炎の症状を改善することができました。

 

「一般的に、我々の発見は、NMN投与によってNAMPT依存NAD+生物合成経路を活性化させることが、炎症性疾患を治療する新たな治療戦略であることを示している」と、Hong toその仲間達によって結論づけられました。

 

NMNはIBD(炎症性腸疾患)を治癒できるか?

この新しい治療提案があるにもかかわらず、この研究が臨床試験へと進展する例が限られたものになっています。これは「マクロファージ-特定のNAMPTの枯渇」に関する状態が、臨床試験の設定にとって難しかったからです。

 

しかしながら、Hongとその同僚は、「NAD+」がマクロファージの浄化作用と炎症の治癒において極めて重要であると強調しました。マクロファージを含む細胞では、「NAD+」は主にニコチン酸(ビタミンB 3のであり、ニコチン酸とも呼ばれる)および魚、肉、キノコなどの様々な食事源から作られます。その適切な補充がないと、人はペラグラとして知られる症状で苦しむことになります。

 

一方、IBD患者は一般的に、腹痛、下痢、食欲不振などの症状がよく現れるため、食事や経口投与に問題を抱えています。そのため、栄養不良や欠乏を招くことが多く見受けられます。IBD患者の20%から85%に栄養失調が見受けられるという報告があります。さらにまた、栄養失調は、IBD患者への不十分な診療の結果が招いた最も憂慮すべき要素となっています。このように、これらの情報が意味することは、慢性的IBD患者で栄養失調状態に陥った患者の免疫細胞では「NAD+」欠乏(我々の研究で言うところのマイクロファージ欠損と同じ)が起こっているのかも知れない。

 

さらに、老化とは、ヒトを含む多様な有機体生物の体内組織および細胞の「NAD+」レベルがゆっくりと低下しながら起こる現象ということができます。「NAD+」レベルの低下は、認知力低下、癌、代謝疾患など、多くの老化に関連する疾患に関連しているのです。注目すべきは、身体の老化過程において、多くの細胞組織においてNAMPTレベルも低下しているとの報告がなされています。

 

したがって、少なくとも部分的には、「NAD+」の減少は、老化した細胞のNAMPTレベルの低下に起因すると考えられます。

NMN(またはニコチンアミド)の補充は、IBD患者の炎症の重症度および持続時間を抑え、特に高齢者または栄養不良に陥ったIBD患者の症状改善に効果的な治療戦略であるように思われます。

 

ソース

Hong SM, Lee AY, Hwang SM, Ha YJ, Kim MJ, Min S, Hwang W, Yoon G, Kwon SM, Woo HG, Kim HH, Jeong WI, Shen HM, Im SH, Lee D, Kim YS. NAMPT mitigates colitis severity by supporting redox-sensitive activation of phagocytosis in inflammatory macrophages. Redox Biol. 2022 Jan 15;50:102237. doi: 10.1016/j.redox.2022.102237. Epub ahead of print. PMID: 35063804.

 

 

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この記事を書いた人

NMNの魅力に取りつかれた研究者です。めちゃくちゃ良い成分なのに、粗悪品が出回ってきてしまっているので、読者の方々が良い製品に出会えるように良い情報を届けられるように頑張ります!

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