「NMNがティーンエージャーのストレス耐性に効果」スイス研究者からの発表

「NMNがティーンエージャーのストレス耐性に効果」スイス研究者からの発表

スイスの脳と心の研究機関EPFLの研究によると、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、脂肪から脳への信号を受け付けないようにすることで、思春期のストレスや社会適応に問題を持つ若者や、肥満の子供たちを助けることができる可能性があるかもしれないと示しております。

ハイライト

  • 思春期にストレスを受けた成体マウスは脂肪の蓄積が増え、周りとの関係がうまくいかなくなります。
  • 脂肪と血液でNAMPT酵素が生み出すNAD+レベルの低下は、思春期にストレスを受け引き起こされる社会性の減衰に生涯リンクします。
  • 脳機能や社会性の欠陥はNAD+を押し上げる混合物であるNMNを用いた療法によって防ぐことができます。

子供のときの肥満は、社交性に貧しいなど、想像よりも多くの健康問題を引き起こします。これによって生じる行動の相互作用は思春期におおきなストレスをもたらし、生涯にわたって内臓脂肪の蓄積の調整をしなければならないサイクルとなります。このことはさらに青少年の適応力とストレス耐性に影響を及します。しかし、ストレスによる脂肪組織の変化が脳に信号を送り、行動の変化を引き起こしているのかどうかはまだ不明です。

『Science Advances』に発表された研究によると、思春期にストレスによって脂肪が増加すると、NAMPTという酵素の脂肪から側坐核(社会的な行動をつかさどる脳の領域)へ伝達を減衰させるということです。スイスのEPFLの研究者は、思春期のストレスによって引き起こされた社会性の低下は、生涯にわたり、血液中のNAMPT(必要不可欠な生体エネルギー分子NAD+の直接的な前駆体であるNMNを生み出すもの)レベルの低下となることを論証しています。しかしながら、NMN(1日約100 mg/kg)のサプリを水と一緒に飲むと、社交性の欠陥および側坐核におけるニューロン機能の障害を防ぐことができるとのことです。これらの発見は、NMNやNAD+を活性化させる合成物が、思春期でのストレスによる社会性への影響を再編成する媒介となりうることと、脂肪増加とこれらの行動との関連について光を当てています。

(Moratóet al.,2022| Science Advances )NAMPTの脂肪と血液における作用は、側坐核中のNAD+レベルに影響する。また増加した脂肪レベル(肥満)を思春期のストレスによる社交障害とリンクする。脂肪におけるNAMPTおよびその細胞外形態(eNAMPT)の血液中のレベルの低下は、思春期のストレスをもたらし、社交性の生涯にわたる低下をもたらす。NAMPTレベルの変化は、最終的には、側坐核におけるニコチンアデニン二ヌクレオチド(NAD+)/SIRT 1経路の損傷をもたらす。eNAMPTレベルを正常化するか、またはNAD+ブースと化合物ニコチンモノヌクレオチド(NMN)で治療することによって、側坐核(NAc)における社交性およびニューロン放電損傷を予防できる。

社会へ適応するための脂肪との闘い

個人の幸福も社会機能への適応も、社会との関係性によって決まります。人は、例えば社交回避や萎縮などのように、一般的にいう社交性の低下をひきがねとして、様々な精神的な病の症状が出てしまいます。社会性の欠如は個人と社会に悪影響を及ぼしますが、その根本的な原因はまだ不明で、また、これに対する効果的な治療法も見つかっていません。

これまでの臨床および臨床前研究によれば、子供時代や思春期に受けたストレスは、脂肪の蓄積および肥満の増加とリンクしており、また社交性の低下にもリンクしてるようです。Carmen Sandi博士は、「ストレスは、うつ病を含む精神疾患を誘発することが知られており、うつ病で見られる特徴的な行動の変化は、実際に個人の社交性が関わっており、内向的で、社会とのかかわりを避け、社会不安症になってしまうこともあります」と述べています。

しかし、太りすぎの人の行動変化が、どのように肥満に関連する社交性萎縮の程度となるかを説明することはまだできず、またどんな体の代謝プロセスが社交性障害を引き起こすのかということも不明です。

思春期ストレスを受けたマウス脂肪が増える

Morató氏たちの研究グループは脂肪蓄積増は社交性の欠如にリンクすることを示すマウスのモデルを作りました。このようなリンクはヒトでしばしば報告されており、これは彼らが動物の中でこのような関連メカニズムを研究する基礎になっています。研究者のSandi氏はこのように語りました。「私たちはうつ病における社交性の低下にフォーカスしています。人類の疫学研究ですでに知られている通り、それは思春期のストレスとリンクしており、このような早期のストレスを受けると人は社交性が低下してしまうのです。私たちは人生の早期のストレスで引き起こされた脂肪成分の変化が脳の変化を引き起こすかどうか?そしてついには長く引く社会行動の変化を引き起こすかどうかについても探求しています。」

研究の一環として、若いマウスにストレスを加え、食事は通常の量を維持し与えて観察しました。これらのマウスは、筋肉の減少と脂肪の増加(体重の変化なしで)という結果になりました。それと同時に脂肪細胞が大きくなり、軽度のブドウ糖不寛容、および成人の筋肉エネルギー利用率の減少とが見られました。これらの研究結果は、思春期前後にうけたストレスが、大人になったときの脂肪組織に蓄えたエネルギーの代謝作用に変化をもたらすことを示しており、若い時のストレスは代謝作用に悪影響を及ぼす危険性を増大させるという見方と一致しています。

思春期ストレスと成体マウスの脳に起こるNAD+シグナル欠陥

EPFLの研究チームによると、思春期にストレスを与えられたマウスは、NAMPT (eNAMPT)およびレプチンを含む、脂肪から分泌される化合物レベルの血中での循環が明らかに低下している事を示していました。レプチンは主に脂肪細胞から発生するホルモンで、脂肪の蓄積を減らすことによって飢餓を抑制し、エネルギーのバランスを調節します。思春期にストレスを受けた成体マウスは、側坐核と呼ばれている社会参加への動機付けを制御する脳の領域で、NAD+レベルが低下していることが示されてきています。側坐核におけるNAD+レベルの低下と一合致するように、思春期のストレスを受けた若いマウスもSIRT 1の対象となる遺伝子活動レベルが低下しています。SIRT 1は長寿に関連するNAD+依存性酵素です。

Morató氏と仲間の研究者たち次に、側坐核にNMN(SIRT1の活動を制御するNAD+を活性化するもの)を注射すると、思春期にストレスを受けたマウスのストレス性社交性障害を時を戻すように改善するできると示しました。それとの対比として、SIRT 1阻害剤(EX 527)をNMNと一緒に注射したところ、この効果は消滅したため、この効果はSIRT 1によって引き起こされたのだということを示しました。

(Moratóet al.,2022| Science Advances )側坐核にNMNを投与すれば、オスのマウスでは思春期周辺のストレスによる社交的な障害を防ぐことができる。(A)対照群とストレスマウスの両方に、側坐核(NAc)に対する誘導スリーブを入れた。(B)ベクター(Veh)またはNMN(25 mm)マウスのNAc NAD+レベルを投与する。(C)SIRT 1阻害剤EX-527(EX,0.5 mM)の投与は、ストレスマウスNMNの社会的選好を正常化する能力を除去した。

この効果をなぞらえたアプリケーションを目指し、Morató氏と仲間の研究者たちは、NMNをマウスの飲用水に入れることによって栄養成分としてのNMN投与を治療法としての可能性を評価しました。NMNを側坐核に注射した結果と一致して、栄養成分としてのNMN治療法は、ストレスによる側坐核におけるNAD+の減少とニューロン活動の減少及び社会性のある行動のいずれに対しても正常化する結果をもたらしました。

(Moratóet al.,2022| Science Advances )食事でNMNを補うことは、成体マウスの思春期ストレスによる脳の機能と行動障害を逆転させることができる。1日100 mg/kgのNMNを2.5週間投与すると、マウスの社交性が回復した(左)、側坐核(NAc)中のNAD+レベル(右)、およびストレスマウス中のNAc中のニューロンが活性化した。

一方では別の実験において、成体マウスの脂肪の中のNAMPTの活性化が、思春期のストレスによる血液eNAMPTレベル、側坐核のNAD+含有量、社会的行動wo

正常化したと報告されました。さらに、脂肪組織のNAMPT遺伝子活性化は、ストレスによる脂肪の蓄積を減少させ、社交性の欠陥を完全に救いました。側坐核へのSIRT 1への直接のターゲットやNMNの注射は、体の組織への影響は及ぼしませんでした。これらの観察は脂肪組織内におけるNAMPTの正確な役割を理解するうえで極めて重要なものとなりました。

子供と青少年のNAD+レベル向上

この研究では、思春期にストレスを受けた成人の社会性障害と脂肪が蓄積される脳と脂肪の経路の関連性を明らかにしました。Morató氏とその仲間たちはNAD+を活性化させることが、主に若い時のストレスが引き金になった脂肪代謝作用の変化に関連する行動的な欠陥を、時を巻き戻して回復させる有望な治療法となる可能性に光を当てました。しかし、EPFLの研究者は、思春期の間にNAD+活性化するという研究は、まだそれほど多くはなされていないことに対しては、注意を払うべきだと述べています。Sandi氏は「注意すべきは、我々の研究は成人期の研究で、栄養的な治療を適用したのであって、ストレスの多い子供や青少年はNMNを服用すべきだとは言っていない。重要なのは、まず彼らのNMNやeNAMPTの血漿レベルが低下したかどうか、そして若い世代に対するこのアプローチの効率性を見るための研究にターゲットを絞り、それを実行し、分析していくことだ」と述べました。

ソース

Morató L, Astori S, Zalachoras I, Rodrigues J, Ghosal S, Huang W, Guillot de Suduiraut I, Grosse J, Zanoletti O, Cao L, Auwerx J, Sandi C. eNAMPT actions through nucleus accumbens NAD+/SIRT1 link increased adiposity with sociability deficits programmed by peripuberty stress. Sci Adv. 2022 Mar 4;8(9):eabj9109. doi: 10.1126/sciadv.abj9109. Epub 2022 Mar 2. PMID: 35235362.

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